12/26 L'Arc-en-Ciel 30th L'Anniversary TOUR 代々木第一体育館 最終日(ディレイ)
15年前の私に今伝えるとしたら、
「あ!大丈夫大丈夫!ラルク全然腰曲がってないよ!ちょっと肉離れしてたり、ステージから落下したりしてるけど!私もマスクしてるけど!」
たぶんそれを聞いた大学3年生の私は気が気じゃないだろう。全然大丈夫じゃない。
何事だと。
とりあえず、30周年を迎えられたことは素直に嬉しい、が、こんな未来は描いていなかった。なんなら2020年始まってすぐのMMXXツアーに行ってた私でも、だ。
突如として始まり、拡散し、今なお世界に影響を及ぼし続けているコロナウイルスから完全に抜けだせないままの2021年。
ラルクの30周年のお祭りツアーは静かに始まり、沈黙を保つことでなんとか完走することができた。
私が見たのはツアー最終日のディレイ放送。地元の映画館で。
当時の私が聞いたらちょっと寂しいと思うだろうか。だよな。
お祭りじゃないんだよ。
なんかもう、祈りを捧げる場みたいな。
みんないるのに、みんなで見てるのに、私は一人でアルバムめくってるみたいだよ。
それでも、映画館ですべてを見終わった後、おなかがじんわり温かくなった。
これはこれでいい。そう思える日がいつかくる。
声が出せなくて、シャカシャカふっていたマラカスライトも、
hydeさんは「いつかいい思い出になるといいよね。」と言っていた。
冒頭の「get out from the shell」をフードを被った状態で歌うhydeさんを見たとき、
2000年のREALIVEを思い出した。
サビに入るまでスクリーンに映し出された檻の中で演奏をしている彼らを見て、
TOUR 2000 REALの格子状のアルミ(鉄?)の枠で囲まれた飾りっ気のないステージを思い出した。
21年前私が初めて見たライブを思い出させた。
やっぱり、これはこれでよくなかった。ものすごくあの場に行きたくなった。生で見たかった。涙出た。
このさみしい気持ちと悔しい気持ちは、次で昇華させたい。
それにしても、なんて瑞々しいんだろう。
ブルースハープを吹いてはきょろきょろするhydeさんにミーアキャットみを感じ、
ふふっと笑った(映画館全体で)その後、演奏された「flower」。
その瑞々しさといったら、今朝テレビでちらっと見た「カムカムエブリバディ」に出てくる深津絵里さんのよう。
(彼女もhydeさんより少し下ぐらいのお歳なんですが、びっくりするぐらい18歳の役がぴったりで。初心さがありつつ凛として素敵なんです。目指したい姿。)
まだ、恋も愛もそんな知らなくて、手に取った恋や愛がひたすら刹那的に映る。そんな感じが、今演奏されているその音から感じとれる。
はたまた「fate」をきけば、心臓の奥をぐっと押してくるような音で、Kenちゃんのほうを見れば、フレキシブルに緊張感MAXなギターの音を奏でている。
「NEO UNIVERSE」の鮮やかでキラキラした音に私は今でも「21世紀は明るいんだろうな」という淡い幻想を抱く。
その後の繋ぎの音で、うわー!こうきたかー!とゾワゾワし始まる「DRINK IT DOWN」。
このイントロが流れた瞬間、今日一声を出せないことを悔やんだ。
「キャー!」っていいたい「っっっっかーーーーー!かっけぇぇぇぇぇぇ!」っていいたい。
声が出せないまま泡になってい消えていった人魚ってこんな感じ?
それとも、「王様の耳はロバの耳ー!」って井戸に向かっていった人ってこんな感じ?
ともかく、ラルクアンシエルを1曲で紹介しろと言われたら私は迷いなくこの曲を選ぶ。
「with Dune…」と歌うhydeさんの儚さと言ったら砂のお城のよう。ぺしゃりと膝を折って座り込む当時のソバージュhydeさんが透けて見える。
MMXXの時と同様、序盤から4人の演奏がバチっとはまっていて、
でも、それが重くなく軽やかに聞こえてくる。
それに加えて、どの曲も当時の新鮮さそのままでこちらに送り出されてくる。
以前はライブに行ってもグルーヴを感じるまで時間がかかっていて、
いい曲が不完全燃焼で終わることもしばしば。
昨今のライブは曲の匂いは当時のままに、演奏は完璧というありがたい状態。
どの曲も聴き終わりには「瑞々しい…」と呟いていた。
思うに、ラルクは「骨太」なバンドにはならなかったなと。
いろんな野球選手が体を鍛えることに集中するあまり、年を追うごとにムキっとするか丸っとしてしまう中、
イチロー選手はあまり鍛えるということをせず、シュッとした体型を維持しそれを生かしたプレーをしている。
それとなんとなく似ている。
4人が30年間四六時中膝を突き合わせて活動していたのではなく、
それぞれに磨き上げていったからこそ、いつまでも新鮮で瑞々しい音が届けられるのではないかと思った。
「EVERLASTING」は、ラルクで昔やっていそうな雰囲気のものを2014年版でやってみたという、
時系列からぽっかり浮かび上がった曲で、聞いていると頭が混乱する。
歌詞もhydeさんの私情ではないけれど、hydeさんに乗り移った女性の私情という感じがして、なんかこう…聞いていると聴いていられない禁忌の香りがする。
なんとも鬱々とした雨の音が残り胸がざわざわする中、
雷鳴とKenちゃんのギターの音色が交差する。
聞こえていた雨の音が上流の川のせせらぎに変わった気がした。
続く「MY HEART DRAWS A DREAM」は、何度感謝しても感謝しきれず
何度涙してもまだ新鮮な涙が出てくる曲。
つぎはぎだらけの未来を歩んできた自分に今日も刺さる。
子供に聞かせたいラルクの曲ナンバーワンだ。いつか聞かせて一緒に歌いたい。
いつもライブでは今日この日までのことを思い歌っていたが、
今日は歌うことができないとわかっていた。
どうなるのだろうか。メンバーが歌うのか。
すると、会場では優しくきれいなハミングがながれていた。ピアノの旋律とともに。
会場の人たちが何とかして届けた歌。
そうかそうか、こういう形になったのか。今最大限できるこの時期しかできない歌声。
2008年、L'7ライブでのTETSUYAさんの低音コーラス以上にそれは優しく、
私はたぶんあの日の次ぐらい泣いたと思う。
同じようにラストの「あなた」の大合唱もハミングとなり、
その思いをつないで優しく歌いおさめるhydeさん。
「GOOD LUCK MY WAY」をきくと、2008年から2011年まで3年間、待ちに待ったラルクのライブへいけることのわくわく感を思いだし、
「ここまでつまづいてもこれたから」という歌詞がやたら自分を励ましてくれる。
今思うとこの曲は、2008年のL'7の時に歌われた「MY HEART DRAWS A DREAM」の
「そこからは未来が見えるかな ツギハギであろうと」に対するアンサーソングのように思える。
今もあの時と同じように待っている。
つまづいたり、それぞれに人生を謳歌しながら。
このハミングが力いっぱいの歌声になる日を。