白地図
過去に「go blank」と名をつけた個人のサイトをやっていた身として、このタイトルにニヤニヤした。「go blank」は、辞書眺めててぱっと目についた熟語で「真っ白になる」みたいな意味。で、ストレイテナーのアルバムは「Blank Map」。意味は「白地図」。
今回のアルバムの3曲目の歌詞から引っ張り出してきたらしくて、今の自分たちのテイストにあうものだとインタビュー等でいっていた。
ここから自由に描いていける。どこへ行っても良い。
20年目を迎え、越え、一息ついたフラットな状態。ピッタリなタイトルだ。
ミニアルバムだからこそのバラエティに富んだ曲たち。
でも、「とっけんはっけんだな」とも「めちゃくちゃやってんなあ」とも思わず、
どれをとっても「あぁストレイテナーだ」と思う不思議さ。とっ散らかってない。
どちらかというと前回のアルバムの方がとっ散らかってた気がする。
嵐のように「シンデレラソング」がはじまって、木々に残っていた葉が落ちるかの如く
「wish I could forget」がながれ終わった時は一瞬何が起きたんだと思った。
今回は「今後のストレイテナーのライブの出囃子にする」と言っていた「STNR Rock and Roll」から始まり、
20周年を締める場で披露しファンの一人のことを思って作ったという「スパイラル」で終わる。
まず、始まりと終わりがきちんとしてる。ほんとちゃんとしてる。ほっとするわ。
正直、これまでの出囃子のきらきらとした星屑が降り注ぐようなSEが好きだった私にとって、あれが聴けなくなることに一抹のさみしさを感じていた。
だが、その感じを少なからず踏襲してくれている新しい出囃子。出囃子にしてフェードアウトして次の曲に行ってしまうにはもったいないラストの美しいメロディ且つホリエアツシの高音。
そりゃノドチンコも飛んでいきそうになるだろう。頼むからライブの1曲目として出てきたら歌ってほしい。しんどいかもしんないけどその苦しくも美しいメロディを作ったのは紛れもなくホリエアツシ本人である。
リード曲になった「吉祥寺」は、今ではすっかりお得意となったメロディが引き立つPOPな曲になっている。
「雰囲気とメロディがかっこいい曲ならできれば英詞で聴いていたいよなぁ」なんて、
テナーに対してぶしつけに思っていたころの私に喝を入れたい。テナーの日本詞はいいぞ。サビの途中からくる泣きのメロディ、この譜割りに英語はむりじゃろ。
この曲のサビを聴いてミスチルとスピッツが浮かび上がってきたが、終わり方は意外にもあっさりとしていて。このくどくなく、ざらっとした感じがテナーなんだよなあと思う。
「Jam and Milk」は意外な曲だと思われるのだろうか。
いやいや、テナーにOJが入った時からこういうオシャレな感じは各アルバムに1曲は入ってきてたでしょう!?っていうぐらい私にとってはこれもまたテナーらしさを感じる1曲だ。
ただ意外なのは日本詞が入ってたこと。
この軽快なリズムに絶妙に日本詞を入れ込んできた。
「何だって意のままさ」があのメロディに乗せれたときめっちゃ気持ちよかったんじゃなかろうか。
まぁ、さすがに歌詞全体に意味を持たせているというより、語感で選んでる気はする。
この曲を聴きながら、以前ヴィレッジヴァンガードで流れていたのを聴いてドはまりした「ala」というバンドを思い出した。オシャレな感じのロックバンド。そもそもロックバンドという位置づけでいいんだろうか?オルタナ?昨今流行りのCity Popっぽさもある。
残念ながら結構前に解散している。彼らが今もまだ活動していたなら絶対今の時代はまっただろうになぁと思わざるを得ない。
「青写真」というタイトルだけでもうなんか仄暗さが見えてそわそわする。
狙い通り、それはストレイテナーが最も得意とする少し重ための、それでいてしっかりサビで広がっていくタイプのバンド感満載の曲だった。
UKロックの陰鬱で、じめじめした感じをAメロで出し、Bメロでためてためて、サビで一気に広がっていく、飛んでいく。
オリラジのあっちゃんが「(ラルクの)kenさんの曲は飛ばせてくれる。」といっていたが、この曲もそれにあたるといえる。だから、ラルクファンの人にこのアルバムの中から1曲お薦めするとしたら間違いなくこの曲を薦める。
テナーの良さがものすごくつまっている。
ぬけるような青空に灰色を混ぜ、
澄んだ海にも灰色を混ぜて少し彩度を落とした「中間色」のストレイテナー。
それを好きでいる私にとって、数年前のアルバム曲で「原色でいたい」と歌われたときは、「えっ、そうなんだ。」とびっくりした。
もっとPOPでもっと日の当たる澱みのないところにいたいのかなと。そういう曲をこの先作っていきたいのかなと。
その曲が入っているアルバムはそれまでの作品に比べると確かに「原色」っぽさがある。
でも、あれから数年たって。
相も変わらずに、変われずに、こういう曲がうまれるんだろうね。
最後の曲が一足先に配信されたとき、どれだけ気持ちが洗われたことか。
雨上がりの水たまりに映る景色のように、澄みきった気持ちでいっぱいになった。
ファンのひとりの思いをこめてくれたそんな曲が
こんなにさわやかで澱みも重みもなくて嬉しいったらありゃしない。
ピアノの音が切なさを呼んでくる。
曲の終わりに少し寂しい言葉を残しているけど
その別れさえもさわやかで、何の不安もなくまたストレイテナーの音楽に出会えるような気さえしてくる。
その期待を胸に秘めたまま曲が終わると、また、ピアノの音が始まりを告げる。
小川のせせらぎのような音、一瞬きらめく水面。
夜になれば星がきらめき星屑が落ちてくる。そんなストレイテナーのロックの始まりを。
白地図を前に、きっと昔ならばあっちにもこっちにもいかないとという義務感があった。
なぜなら、自分たちが浅く見られ、作った曲がうまく世に伝わらないと考えていたから。
でも遠くへ行ってしまったら今度は自分が分からなくなってしまうような不安もあった。
白地図を前に、きっと今なら楽し気にあちこち向かっていく。
手にしたすべてと生み出すすべてがストレイテナーという一つの駅に帰結する安心感がこのバンドにはもうあるのだろう。
3/15 ROCK’N QUARTET vol.3 in Billboard大阪
クラシックとロックの融合という試みを重ねてきたロッキンカルテット。
その第3弾としてストレイテナーのホリエさんがお呼ばれしました。
ストレイテナーにおけるホリエさんの歌声というのは近年ずいぶんと雰囲気を
変えてきておりこれは面白いことになるのではないかと思い、
私もはるばる大阪へと足をのばし行ってまいりました。
自分も歳を重ねているのもありまして、ライブという暑苦しい熱に浮かされるのも
もちろんいいけれど、たまには座って、しかもお酒なんぞ嗜みつつ見れるコンサートも
いいんじゃないかと思ったんですよね。「聴く」と「見る」に完全集中できる。
ステージはスタンドマイク1本を囲むように弦楽器4人の椅子と譜面台が。背後にグランドピアノ。
これは、本当にホリエさん歌に徹するんだなということがわかりました。
アーティストカクテルの「彩雲」はスパークリング清酒をブルーキュラソーとソーダでわったとても飲みやすいカクテル。グラスの縁についた塩がちょっとアクセントになってました。
事前に軽くご飯とお酒をいただいているうちに開演の時間に。
まずはNAOTO QUARTET の4人が先に入ってきて1曲。
上手のドアを開けてメンバーが入ってきました。ホリエさんもあそこからでてくるのかな?どうなんだろうと思っているうちにその曲が終わり、さぁ、何の曲から…と
ステージの方見たら…その…楽譜にのってる曲名見えてしまいました…向井さんの。
これ、この先迂闊にここみたらあかん気をつけなと思いました。
で、始まったのはゆったりとした「シーグラス」
バンドではいきなり曲が始まりますが、ちょっとした前奏をつけてくれまして。
その前奏の時に「キィ…」と先ほど4人が出てきたところからドアのあく音がして
ホリエさんがステージに入ってきました。
途中客席に近いところを通り自分の席の近くも通ったんですが、この歩いてる時がなんとも言えない緊張感に包まれていました。
ライブハウスとかホールのステージより歩く距離があり、且つ普段のライブならばみんな騒いでるのに今日は静かなもので。
さながら卒業式で卒業証書をもらうときみたいな。
あるいは披露宴でお色直しをした際、先に新郎だけ入場するときのどう盛り上がっていいかわかんない感じ。
本人がパーティーピーポーでノリノリで入ってくるなら場ものってくるんだろうけど…まぁ、自分の結婚式思い出した。旦那ノリノリなタイプじゃないのに「サムライソウル」BGMにしてごめんって思ったやつ。
1曲目はホリエさんの歌声は緊張していないものの、それ以外がとかく落ち着かなかった。
とにかく楽器をもっていないことが大きい。手をどうするか問題が早速発生していた。
最初やサビの所ではスタンドマイクを握っているんだけれども、サビが終わって2番のAメロに入ると手がだらんとして軽く前屈みになってました。
あぁもうその手をどうするんだよどうしたいんだよどこに力を入れたらいいんだって感じになってるあああああああなんかもう気恥ずかしくてどうしようもない!!!!
って爆発しそうになって盛大ににやける口元を慌てておさえたよ。
ホリエさんも視線があちこち飛んで。視線を逸らすときに口元が静かににやけるんですよ。
そのにやけ顔で視線そらした先に自分がいるからまた爆発しそうになって慌てて顔をそらすっていう。あの人のにやけた顔たまらんな。でも直視はできん。
視界に入るの怖くて隠れたくなったコンサート人生初かもしれん。
1曲目終わると即座にMCが入ってました。「始まってしまいました。ロッキンカルテット」と。
お、おうよ。
少ししゃべっているうちに落ち着いたかな。あっちもこっちも。
2曲目は「DONKEY BOOGIE DODO」。
ロッキンカルテットやるってなったときこれは絶対やりたいと思っていたそうですよ。
私はクラシックと一緒にやるってなった時、バンドの中でも割とメジャーな曲とか、どちらかというと重たいバラード曲を選ぶのかなぁと思っていたのでこの選曲には驚きました。
ホリエさんの心地よいファルセットが弦楽器の音にうまく乗って次第に気持ちがぐいぐいのっていくのがわかる。
楽器を持たないホリエさんに見慣れてくると、手をだらんと下げているのもまぁ、適度に力が抜けている方がこの曲は歌いやすいかと思ったり。
間髪入れずに入った3曲目は「Brilliant Dreamer」
また意外な曲。でも、私がテナーでも特に好きだなぁと思う温度の曲。
これぐらいの温めというか余裕のある曲がテナーの曲の中でも大人っぽいなぁと思ってて、
その大人っぽさとクラシックとこの大人な空間が相まってくぅー…酒がすすむぅー!
とアサヒのスタウトを飲む(彩雲はすでに飲み干した)。かっこつけてるけど初めて飲んだ。クセあるなぁ!
ストリングスの音はどことなく曲を「冬」っぽくさせるなぁとこの曲を聴きながら思いっておりました。HYDEさんのソロの曲に冬の曲があるんだけどあれと雰囲気が似通る。
この曲でたしかホリエさんはハンドマイクになっておりました。
両手でマイクをもつホリエさん。いろいろと新鮮な光景が目に飛び込んできます。
MCを挟みます。ニュアンスでかきます。
NAOTOさんによるカルテットの紹介があり、その後ホリエさんに「どうですか?」
と聞くと「いいですね。もう既に気持ちよくなってます。」と。
「ロッキンカルテット始まっております、がここでちょっと。
今回素晴らしいコラボレーションをさせてもらっていますが、僕、さらに贅沢をいいまして。
ぜひ、デュエットをお願いしたいと。ということでゲストをよんでおります。」
ん?この前みたいに周年バンドのうちの誰かが来る?と一瞬思ったのち
「majikoです。どうぞ。」と紹介され入ってきたのはホリエさんがプロデュースを手掛けている女性ソロアーティストのmajikoさん。
あー!そうかそうか!
呼ばれておそるおそる、そろそろと両手を前に出して恐縮そうに入ってくる彼女。
さながら猫娘のような。なんて挙動不審な!!!!?
最後の曲でも再び呼ばれて彼女がはいってくる一面があったんですが、
ホリエさんに「ほら、majikoよんでるよ。おいで(きなさい?)」って言われてるの見て
なんだろうこの絵面…親戚の大人の飲みの席に呼ばれた姪っ子か年の離れた従妹みたいな感じ…。とほほえましかったです。
なんだけど、ひとたび歌い始めるとすごい存在感を放つmajikoさん。
「僕が彼女に提供した曲をやります。」といってはじまったのが「アマデウス」
この曲は知らなかったんですが、かっこいい。
鼻筋の通った中性的な顔立ちですらりと伸びた背丈の彼女。
ホリエさんとあんまりかわらない。
衣装はお上品なブラウスとグリーンのロングスカート。
Aメロの密やかな歌い方、Bメロの絶妙な音のとりかた、サビで強く強く存在を表す歌声。
一瞬で好きになりました。
2人で歌うのと今回は主役がホリエさんということでmajikoさんのほうがハモりパートになったりしていましたね。
ホリエさんもだいぶあったまってきて、マイク持ちながら、片手はワイヤーをさばきつつ、きつめなサビを歌い上げる。
普段彼女が歌う、彼女のお年頃に抱く不安定な心模様を、倒錯的なその感情を、ホリエさんが歌う。
うっひょぉぉぉぉぉ(語彙力)たまんねぇえええええ(オッサン化する脳)
後で知ったけどこの曲ホリエさん歌詞も書かれているそうで…。
「傷つけて すぐにでも 抱きしめたいよ 痛いほど」
歌う方に寄せて書いた歌詞とはいえ、ホリエさんからこれらの言葉が紡ぎだされ
あまつさえホリエさんの声でうたわれてしまうと、もう頭がくらくらします…。
終わりの方にメロディが少し変化するところを見事に歌い上げたところで完全に射抜かれた。
歌い終わるとまた恐縮そうな彼女に戻る。面白い子だなぁ。
ですがこのまま2人のデュエットタイムは続きまして。その曲に入る前にNAOTOさんからツッコミが入る。
「ロッキンカルテットで何歌うって話になった時に一番最初にホリエさんが『これやりたいんだけど?』って言ってきて、えっ!?ロックじゃないじゃん?本当にこれやりたいの?って思わず聞いた。」
「で、僕は、『はい。』と。もう、なりきります、野獣に。」
ホリエさんがなりきるって、なんかどこかできいたような…。と思っていると
始まったのがディズニーの「美女と野獣」
あぁ!坂本美雨さんとディアフレンズでもディズニーの曲デュエットしてたーーーーーーそれだーーーーーー!(ラジオで歌っていたのはアラジンでしたが)
なんとなくMCのくだりからディズニーやろ…とは思いました。
映画の「シンデレラ」もすきだし、なんだかんだでホリエさんめっちゃディズニーすきやな…。かわいいやん。ロマンチストやん。
これまたmajikoさんの英詞を歌い上げ方がとてもかっこよくて素敵で聞き惚れてしまいました。
帰ってきてからmajikoさんの曲をいくつかダウンロードしているんですが、どちらかというと英詞の曲が自分にはヒットするみたい。
デュエットタイムがおわりmajikoさんがはけると、NAOTOさんが
「なんか、すごいよねmajikoちゃん。ああやってしてるととても緊張しているように見えるんだけど、歌うとさ全然緊張してないの。」と、その場にいた大多数が思ったであろうことをまとめてくれていました。
この辺でもMC挟んでいたかな?
「あのー、みなさんもっと料理とか飲み物とか注文していいんですよ?」とNAOTOさんに言われ苦笑する客席。
そうそれ。確かに頼めるってわかってるんだけど歌ってるときに「すいませーん!ビール一つください!」は言えません、笑
だから自分も始まる前にある程度頼んでおいたんだ。
「まぁ、ここって本来そういうとこだしね(食事やお酒を楽しみながら音楽を聴く)。そうそう、話をするのを忘れていたんだけどオリジナルカクテルの『彩雲』ね。みなさん飲みました?頼んだ人ー?(前の席の方に)それはちなみに、アルコール入りですか?ん?あぁ、アルコール入りは売り切れ?だ、そうです。」
よかったー!最初に注文しておいて。
「僕、開演前ステージの横でまっていたんですけれども、めっちゃくちゃ注文入ってて次から次へとスタッフさんが飲み物運んで行ってました。」
そのあとに始まったのがホリエさんのソロプロジェクトentから「Zoe」
これ一番うれしかったなぁ。私が手にしている数少ないentさんの曲の中で一番好きな曲。テナーと違って声を張らずに静かに歌うこの曲がロッキンカルテットで融合したらどうなるかなぁって思いがあったのです。
とんだmiracle happenだったよ。
ここまでのセットリスト、シーグラスをぬくと本当にメジャー感度外視で
ホリエさんが素直にこの仲間で歌いたいものが選ばれているんだということが分かります。
次に歌われた「タイムリープ」も、これが入っているアルバムの核となる曲では正直ないし、
まず、絶対入るだろうと思ってた「SIXDAY WONDER」がなかったんだよ?
後でご本人言ってましたが、聴き手がある程度予測している「これやるだろう」にはホリエさん無頓着なんだそう。
まぁそれが功を奏しておりますよ。こういうちょいとマニアックだけど心地いい曲が聴きたかったんだよ私たち。
「ロッキンカルテット早いものでそろそろ終盤にさしかかっております。ここまでカバーも含めいろんな曲をやってきましたが、クラシックということでこの辺で壮大な曲を歌いたいと思います。
そうホリエさんが言ってはじまったのが「イノセント」
ホリエさんのMCの途中でまたもや向井さんの譜面からこのタイトルが見えちゃってたわけですが、はて?この曲どんな曲だったかな?と思い出せず。
無理もない聞いたことない曲だ。
当時NEXUSとクリーチャーをアルバム通してきいていなかったので、ストレイテナーで知らない曲がまだあるんですよ。
歌い始めた時は、「あぁたしかに壮大そうな重い曲だ…、でもまぁクラシックとはあうよなぁど真ん中の曲だよなぁ」と思っていたわけですがサビで頭ガツーン!と殴られたような気持になる。
この曲のサビがもう素晴らしくロマンチック且つドラマチックな展開で。
なんで私この曲ほったらかしにしてきたんだ!!!!こんなに素敵なサビあぁ…iTMSの試聴ではここまで聞けてなかったから…?
サビのメロディのつくりは折り紙を折ったり、はたまたお祈りをするときに両手の指を組み合わせるような、そんな何かと何かを丁寧に組み合わせていくというイメージがあって。
ですが、歌われるそのメロディは逆に丁寧に折られた折り紙をゆっくり開いていくような解放感を感じるんですよね。不思議なことに。
サビを歌うとき両手の指を絡め合わせしっかりマイクを握っていたホリエさん。
祈りの歌のように思いました。
家に帰ってiTMSでダウンロードして聞いた「イノセント」はちょっと硬い感じがしました。
バンドとクラシックという違いもあるけれども、ホリエさんの声が違いました。
ホリエさんの以前の声はそれこそ氷にアイスピックを突き刺すような、余白も空気も感じない声だったように思います。
それがクールな音楽と合わさったりぶつかったりして相乗効果をもたらしていたのかもしれません。
ですが、歳を重ね、ソロで抜き唱法も覚えた今のホリエさんの声はものすごく空気を含んで風を纏うような声。
ご本人のイメージも歩けばそこにいい風が吹きそうな、さながらスナフキン。
NAOTO QUARTETの重厚な音に包まれながら歌った「イノセント」は力強くて優しい、忘れたくない歌声になりました。
そして、ディザー映像でチラ見せのあった「彩雲」で本編終了。
ホリエさんいったんはける。が、NAOTO QUARTETその場に残ってる。
NAOTOさんがえへへと笑いながら「えーっと…アンコールありがとうございます。」
と早々にアンコールを始める、笑
「もう少しやろうと思いますので、あのーホリエさんすいませんが戻ってきてください。」
と言われすぐさま戻ってくるホリエさん。笑
「先日、この曲を作るにあたって、ちょうど時期的にロッキンカルテットもあったので
アレンジをお願いしました。その曲をやろうと思います。」
そういって始まったのが 「LOVERS IN NAGASAKI」
長崎の方が長崎の好きなところをしたため、それをホリエさんがまとめて曲にし、NAOTO QUARTETが演奏に加わった曲です。
綺麗な曲。NAOTOさん曰く、久しく自身が持っている弦楽器を打楽器にしない
ストリングスとピアノのだけの曲。
ロッキンカルテットの代償、副作用?だか知りませんが、普段はクラシックの人たちなのに弦楽器を叩かないことに違和感を感じたそうで。
曲が終わるとホリエさんが「これ、最初セットリストに入ってなかったんです。」
と、衝撃の一言。
まじか…。という客席の反応に「やってよかった…。」と安堵するNAOTOさん。
曲が解禁されたのがロッキンカルテットの数日前で、NAOTO QUARTETが演奏していることだしこれはやるっていうフラグでしょ?とおおよその人が思っていた、笑。
「twitterでね、『やりますよね…?』ってコメントがくるもんだから、『ホリエくん…!これは…』ってなって。」
「あー、基本僕そういうとこ無頓着なんですよ。」
だからこそフェスやイベントで、思ってもみなかった曲が飛び出てきたりするんですね。納得。
「最後に、オールスターズでね、やろうとおもいます。ということで再びでてもらいます。majiko、でておいでー。」
相も変わらず手を前にだしてひょいっひょいっと出てくるmajikoさん。
まぁ、やる曲はもう1つしかないですね。彼女がカバーしてくれたストレイテナーの曲、「冬の太陽」
majikoちゃんのキーに合わせて歌っているのでホリエさんの声もいつもより高かった気がします。このデュエットはお二人並んだ瞬間から望んでいたのでめっちゃうれしかった。
そんなこんなで全11曲。テナー7曲、カバー2曲、ソロ2曲。2部制なのでなんとなく時間はこれぐらいとわかってはいたけれどももっと聴いていたかったな!酔いしれたかったな!
普段味わえることのできない貴重なコラボレーションを体験できてほんとうによかったです。
ホリエさん、以前はバンドの中では限りなく地味な方で(ひなっちとシンペイさんの存在感が強すぎた)
立ち位置も真ん中じゃない、ボーカルとしてはなかなかない「目立たない人」だったんですが、もうすっかり歌い上げ方が主役級。
ホリエさんの歌のふくよかさを感じられた贅沢な夜でした。
1.シーグラス
2.DONKEY BOOGIE DODO
3.Brilliant Dreamer
4.アマデウス(with majiko)
5.美女と野獣(with majiko)
6.Zoe
7.タイムリープ
8.イノセント
9.彩雲
10.LOVERS IN NAGASAKI
11.冬の太陽
愛をこめて花束を大げさだけど受けとって
ストレイテナーのホリエさんが、幕張のライブで
「いつの日か自分たちの曲を必要としなくなる時が来るかもしれない。
それでも、俺たちは立ち止まらずに鳴らし続けるので、あなたのこの先の人生でまた俺たちの音楽が鳴る日がくればと思ってます」
と、言っていたというのを耳にし、あぁ、まさに今の私はHYDEさんに対して
そんな感じなんだなと納得がいった。
嫌いになったとか興味がなくなったというわけじゃない。
どこかでその声がすれば自然と耳はそちらに集中するし、ご本人が楽しそうに嬉しそうにそしてかっこよく音楽をやっていることに関しては諸手を上げて喜んでいる。
ただ、じゃあ今HYDEさんの最新曲を聴いているかといわれると全くで。
そことは少し違う方面のかっこよさに耳を投じているのが現状。
「必要としていない」というのが自分にしっくりきた。
飲むお酒もコーヒーもあっさり目が好きになってきている私は、音楽もどことなく
あっさり目が好きになってきたのかもしれなくて。
このまま、しれーっと私はHYDEさんに興味すらもたなくなっていくのかな、なんて
思ってたりしたんですよ。最近まで。
ところがどっこい。ここへきてものすごく愛にあふれかえる出来事があって。
HYDEさんの記念すべき50歳のバースデー。それに伴ったイベント黒ミサ。
私は現地に行くこともライブビューイングに行くこともなかったけれど、
twitterで感極まったファンの方々の感想、黒ミサでHYDEさんが話してくれたエピソードなどをみていたら
つられてもらい泣きしてびっくりするぐらい多幸感につつまれた。
誕生日の当日は、久しく開けていなかったにちゃにちゃのレントゲン(アルバム)を開いてじっくり曲を聴き、そこからラルクの一番新しいアルバム(7年前)を聴き、20thラニバーサリーを見始めた。急に依然として買っていない昨今のラルクのブルーレイがほしくなり近場のCDショップへ車を走らせた。もちろん車の中でもipodのアーティストのところからラルクを選択してずっと聞いてた。収穫はゼロ(っていうかネットで買った方が早い)だったけどなんだか満たされた気分。
なんだ。私まだまだ好きじゃないか。お酒だって最近また純米酒好きになってきたしなぁ。
私の人生に確実に沁みわたっていて、また鳴り出したんだわ。期間限定かもしれないけれど。明日からはまた元に戻るかもしれないけれど。
すごくうれしかったです。とても暖かい一日を送れました。
黒ミサのエピソードは毎年きくたび本当に胸が暖かくなることが多くて。
でもって、この前のラルクリぐらいからより一層暖かく感じられることが増えて。
自分を近くで見守ってくれている大切な人たちに、自分を作り上げてきたもの、出来事、人を
少しずつ紐解いていくその丁寧さが美しいなと、そういうところが本当に好きだなと思います。
今年は特に半世紀生きてきた記念の年でもあるのでより、ね。
生まれた時から現在に至るまでのお話もいつになく濃い目にお話しされていたんじゃないでしょうか。
あの時、その時、ターニングポイントであった曲たちの背景もすこしずつ見えてきたりして。
それから、感謝感激雨嵐…湯水のように沸く涙。
少年時代にあこがれていた悪魔の化身のような、正体不明、ミステリアスなアーティスト像はどこへやら。
少年時代からのHYDEさんの夢は、時代とともに意味をなさなくなって消えてしまったわけですが、
ラルクをやったことで、売れたことで、続けたことで、生まれ、かなえられた夢。
VAMPSで夢見た夢。かなえられた夢。ほんの少しとどかなかった夢。
今、HYDEとしてみるこれからの夢。最近かなったちょっとした夢。
「かなわなかった夢」がかなえられていたとしたら存在しなかった、
そんな夢や人に囲まれて今のHYDEさんは出来上がっているのだと思うと
やっぱりもう、よかったなぁと思うしそれ以外のHYDEさんなんてありえないんですよ。
ヒリヒリしたエイリアンメイクのhydeさんが大好きだった私。
もちろん今でも大好き。
でも、今、それより好きなのはたぶん、まどろんだその話し声と
私の人生の片隅で私が必要としていない時でも優しく響いているであろう歌声。
これからも末永く素敵な音楽人生を!