one day I remember

今思うこと、ある日いつか思い出す、その日のために

熱意をこめて紹介する

 

Future Soundtrack

Future Soundtrack

 

 

過去の記事で秋はテナーの曲がはまる、と書いていましたが、

前作「COLD DISC」に続き、今回もアルバムを初夏にだしたストレイテナー

「シーグラス」が夏に飲むカルピスのようにさわやかでびっくりし、

そうか、これからは秋冬に限らず夏もテナーになったんだなと思い知らされた前作。

今回もそのいい流れを維持しながらさらに、さらに、洗練されたPOPな曲たちを

詰め込んだアルバムとなりました。

2曲目の「タイムリープ」なんかはサイダーの炭酸がはじけるようなさわやかさと

キラキラ感があります。

春はあけぼの、夏はテナー、秋もテナー、冬、もちろんテナー。

この勢いで季節を網羅して一年中心地よいテナーの音楽に浸っていたいものです。

 

テナーといえばオルタナオルタナといえばテナー、

英詞で捻りのきいたメロディをクールに歌い上げるホリエさん。

一歩間違えれば不協和音になりかねない、絶妙なバランスの音たちが

星降る夜のごとく耳にながれ、私たちはそこから自分のツボとなる音を

星座をみつけるようになぞっていく。

 

まぁ、私が好きになったテナーは当初から、そして今もこんな感じです。

リズム感だったり周りの音の雰囲気は海外っぽく、

ただし、メロディだけは日本人のもつ繊細さを兼ね備えている

こういうのが自分のツボなのでストレイテナーだったりアレキサンドロスが好きなわけです。

 

そう考えると、今作だったり前作っていうのはそういう自分の好きからは

少し毛色が違います。ホリエさん本人もおっしゃっていますが大分J-POP寄りです。

俗にいう「歌もの」として成り立っている曲が多い。そもそも日本詞が多い。

今作で従来のテナーっぽさがあるのって「Superman Song」と「Last Stargazer」ぐらいじゃないですかね?日本詞だけど「After Season」もそうかな。

あと、攻撃的な曲があまりない。全体的にどこにも喧嘩売ってない。

 

自分が好きなアーティストは大概あまのじゃくだったり捻くれた人が多いんですが、

ホリエさんもアンチPOPなんですよね。もとは。

それこそ2000年ごろにあちこちで流れていた青春メロコアなんて

自分たちじゃぜったいやる気にはならなかったでしょう。

歌詞だってそう簡単に理解されるような安直な表現を好んでいませんでした。

でも年齢を重ねて、その間に様々な悲喜こもごもを繰り返してると

自分は何をそんなにこだわっているんだろうって思って、そのこだわりという名の

「殻」がはずれてくるんですよ。

こだわりをすて、シンプルに中身を伝える。この大切さに気付く。

料理だってどんどんあっさりしたもの好きになってくるしね。

それに、シンプルな素材に深みを感じさせるだけの自分自身がもう出来上がってるんです。

 

ホリエさんはその域に達したんだなと思います。

もう、とげとげしてた声がものすごくやわらかくなって、体温で馴染むシートみたいなフィット感があるし、

本人の雰囲気も「癒し」そのものでバンドマンの後輩寄ってくる寄ってくる。

安直に走ったPOPでも、わかりやすさを狙ったPOPでもない、

たどりついたPOPがこの「Future Sound Track」と思うと、

オルタナテナー大好きな自分も大いに納得できるし、これがまた本当に心地いいし、

ぶっちゃけめちゃくちゃドキドキするんですよ!!!!!

1曲1曲聴き進めるたびに、歌詞カードをめくるたびに

「あのホリエさんがこれを…!?」と声を漏らさずにはいられない。

 

そう、前作のPOPさを引き継ぎながらさらに進化しているのは

ホリエさんの「生々しさ」

 これに尽きます。

 

1曲目の「Future Dance」は赤面して顔を手で覆いました。

いうなれば、声で体なぞられてるような感じ(変態か)

初夏のアルバムだけれど、前作より全体的に湿度があってなんか「梅雨」の

うだるような蒸し暑さも感じる。

あとは6曲目。「もうすぐきみの名前を呼ぶ」

ちょっとさわやかな朝な気もしますが、情景を想像するに照れる。

 

今作は「ラブソング」が多いとのことですが、別にね、いままでも「ラブソング」

かいてなかったわけじゃないんですよ。

ただ、どちらかというと切ない「ラブソング」が多く、抽象的に、断片的に

語られてる感じのものが多かったから、さらりと聞けて、

季節によってはそれがしみてきたりしたわけです。

ですが、今回はぐっと視野が狭まってより具体的になっていて…。

なおかつほんのりと幸せな雰囲気さえかんじる曲もある。

そりゃ、メンバーもどうかしたのかと聞きたくなるってもんです。

 

ストレイテナーのアルバムを聞いてこんなに体温があがったのは初めてです。

 

そのホリエさんの歌声をより引き立たせるように演奏も仕上がっています。

歌に寄り添うように伴奏が成り立っているから、星降る夜というより、

一筋のきれいな流れ星が耳に流れ込んでくるみたい。

インタビューをよんでいると、ホリエさんの歌が変わったのを

メンバーも認識していてそれをリスナーに届けるよう動いていたんだなっていうのがわかります。

 

 

 

 

最初の方に書きましたが、これまでのかっこいいこだわり満載のテナーが

今も大好きです。

でも、これまでのテナーを好きでいたからこそ、今回のこのアルバムが過去最高の衝撃作となり、それでいて納得のいくものとして聴けるんだと思います。

そして、これからテナーを聴く人にとっては、このシンプルかつメンバーの体温を距離感なく受け取れるアルバムを

心地よく聴けるのではないかと思うのです。

ロックキッズにはちゃんと「Last Stargazer」がありますので!

いろんな人の耳に届いてほしいニューアルバム「Future Sound Track」、是非どこかでみかけたら聴いてみてほしいです。