one day I remember

今思うこと、ある日いつか思い出す、その日のために

白地図

 

Blank Map

Blank Map

 

 

過去に「go blank」と名をつけた個人のサイトをやっていた身として、このタイトルにニヤニヤした。「go blank」は、辞書眺めててぱっと目についた熟語で「真っ白になる」みたいな意味。で、ストレイテナーのアルバムは「Blank Map」。意味は「白地図」。

今回のアルバムの3曲目の歌詞から引っ張り出してきたらしくて、今の自分たちのテイストにあうものだとインタビュー等でいっていた。

ここから自由に描いていける。どこへ行っても良い。

20年目を迎え、越え、一息ついたフラットな状態。ピッタリなタイトルだ。

 

 

ミニアルバムだからこそのバラエティに富んだ曲たち。

でも、「とっけんはっけんだな」とも「めちゃくちゃやってんなあ」とも思わず、

どれをとっても「あぁストレイテナーだ」と思う不思議さ。とっ散らかってない。

どちらかというと前回のアルバムの方がとっ散らかってた気がする。

嵐のように「シンデレラソング」がはじまって、木々に残っていた葉が落ちるかの如く

「wish I could forget」がながれ終わった時は一瞬何が起きたんだと思った。

今回は「今後のストレイテナーのライブの出囃子にする」と言っていた「STNR Rock and Roll」から始まり、

20周年を締める場で披露しファンの一人のことを思って作ったという「スパイラル」で終わる。

まず、始まりと終わりがきちんとしてる。ほんとちゃんとしてる。ほっとするわ。

 

 

正直、これまでの出囃子のきらきらとした星屑が降り注ぐようなSEが好きだった私にとって、あれが聴けなくなることに一抹のさみしさを感じていた。

だが、その感じを少なからず踏襲してくれている新しい出囃子。出囃子にしてフェードアウトして次の曲に行ってしまうにはもったいないラストの美しいメロディ且つホリエアツシの高音。

そりゃノドチンコも飛んでいきそうになるだろう。頼むからライブの1曲目として出てきたら歌ってほしい。しんどいかもしんないけどその苦しくも美しいメロディを作ったのは紛れもなくホリエアツシ本人である。

 

 

リード曲になった「吉祥寺」は、今ではすっかりお得意となったメロディが引き立つPOPな曲になっている。

「雰囲気とメロディがかっこいい曲ならできれば英詞で聴いていたいよなぁ」なんて、

テナーに対してぶしつけに思っていたころの私に喝を入れたい。テナーの日本詞はいいぞ。サビの途中からくる泣きのメロディ、この譜割りに英語はむりじゃろ。

この曲のサビを聴いてミスチルスピッツが浮かび上がってきたが、終わり方は意外にもあっさりとしていて。このくどくなく、ざらっとした感じがテナーなんだよなあと思う。

 

 

「Jam and Milk」は意外な曲だと思われるのだろうか。

いやいや、テナーにOJが入った時からこういうオシャレな感じは各アルバムに1曲は入ってきてたでしょう!?っていうぐらい私にとってはこれもまたテナーらしさを感じる1曲だ。

ただ意外なのは日本詞が入ってたこと。

この軽快なリズムに絶妙に日本詞を入れ込んできた。

「何だって意のままさ」があのメロディに乗せれたときめっちゃ気持ちよかったんじゃなかろうか。

まぁ、さすがに歌詞全体に意味を持たせているというより、語感で選んでる気はする。

 この曲を聴きながら、以前ヴィレッジヴァンガードで流れていたのを聴いてドはまりした「ala」というバンドを思い出した。オシャレな感じのロックバンド。そもそもロックバンドという位置づけでいいんだろうか?オルタナ?昨今流行りのCity Popっぽさもある。

残念ながら結構前に解散している。彼らが今もまだ活動していたなら絶対今の時代はまっただろうになぁと思わざるを得ない。

 

 

「青写真」というタイトルだけでもうなんか仄暗さが見えてそわそわする。

狙い通り、それはストレイテナーが最も得意とする少し重ための、それでいてしっかりサビで広がっていくタイプのバンド感満載の曲だった。

UKロックの陰鬱で、じめじめした感じをAメロで出し、Bメロでためてためて、サビで一気に広がっていく、飛んでいく。

オリラジのあっちゃんが「(ラルクの)kenさんの曲は飛ばせてくれる。」といっていたが、この曲もそれにあたるといえる。だから、ラルクファンの人にこのアルバムの中から1曲お薦めするとしたら間違いなくこの曲を薦める。

テナーの良さがものすごくつまっている。

ぬけるような青空に灰色を混ぜ、

澄んだ海にも灰色を混ぜて少し彩度を落とした「中間色」のストレイテナー

 それを好きでいる私にとって、数年前のアルバム曲で「原色でいたい」と歌われたときは、「えっ、そうなんだ。」とびっくりした。

もっとPOPでもっと日の当たる澱みのないところにいたいのかなと。そういう曲をこの先作っていきたいのかなと。

その曲が入っているアルバムはそれまでの作品に比べると確かに「原色」っぽさがある。

でも、あれから数年たって。

相も変わらずに、変われずに、こういう曲がうまれるんだろうね。

 

 

最後の曲が一足先に配信されたとき、どれだけ気持ちが洗われたことか。

雨上がりの水たまりに映る景色のように、澄みきった気持ちでいっぱいになった。

ファンのひとりの思いをこめてくれたそんな曲が

こんなにさわやかで澱みも重みもなくて嬉しいったらありゃしない。

 ピアノの音が切なさを呼んでくる。

曲の終わりに少し寂しい言葉を残しているけど

その別れさえもさわやかで、何の不安もなくまたストレイテナーの音楽に出会えるような気さえしてくる。

 その期待を胸に秘めたまま曲が終わると、また、ピアノの音が始まりを告げる。

小川のせせらぎのような音、一瞬きらめく水面。

夜になれば星がきらめき星屑が落ちてくる。そんなストレイテナーのロックの始まりを。

 

 

白地図を前に、きっと昔ならばあっちにもこっちにもいかないとという義務感があった。

なぜなら、自分たちが浅く見られ、作った曲がうまく世に伝わらないと考えていたから。

でも遠くへ行ってしまったら今度は自分が分からなくなってしまうような不安もあった。

 白地図を前に、きっと今なら楽し気にあちこち向かっていく。

手にしたすべてと生み出すすべてがストレイテナーという一つの駅に帰結する安心感がこのバンドにはもうあるのだろう。