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one day I remember

今思うこと、ある日いつか思い出す、その日のために

  小噺続き。 需要はないと思いつつ過剰供給いたします。 そのうちカテゴリー作ろう。 S的発言を書きながらうきうきするMな女、それが私。 最初に出会ったあの公園にはチャロを連れて散歩に行くと必ずいる。 雑誌を読みたくて図書館に行けば机に突っ伏して寝ていた。 仕事帰りのレディースデー、スカッとした映画を見たいと入ってみれば、 一番前でげらげら笑い狂う男が一人。 訂正しよう。さっき、仕事帰りで「偶然」あったなんて嘘。 待ち伏せていたのである。なんてことない顔で蟻地獄は底で待っていた。 はあああああぁぁぁぁ・・・・。 重く、ため息がのしかかった。 「よくないことがあったんだ?」 「そう、今、まさに今ね。」 「何何!聞かせてよ!」 「あんたに会ったことが今日一番さいってーな出来事よ!」 「・・・なんだ、そのくらい。」 興奮した顔から、一転。一気にさめた目でタバコをふかす。 「てっきし、『あの人』となんか進展あったのかと思ったのに。」 『あの人』発言に脈拍があがる自分をどうにかして抑える。 「進展も何もあなたが期待するようなことはきっとこれからも起きないわよ。」 そう、おきるわけがない。 「うっそぉ。この前のあの表情明らかにこっち意識してたと思わない?」 「思わない」 「じゃあ、『思いたい』?」 「『思いたい』なんて思わない。」 「・・・強情。」 「性悪。」 「かわいくないな。」 「かわいくなくて結構。他をあたれば?」 「少しは俺に感謝しろよ。」 「なんで」 「俺があの時隣にいて、向こうは聞いて来たじゃん?俺のこと。あんた何者?って感じでさ。」 「ただの世間話の流れで出たコミュニケーションのひとつよ。」 「いいや、かなり俺のこと気にしてたねー、『お姉ちゃん』」 「だれがあんたの『お姉ちゃん』よ。」 「だって、俺弟扱いされたしー。で、あいつかなりほっとした顔してたから俺噴出しそうになった。」 「あんたみたいな弟一生いらない。」 「よかったね。」 「は?」 急に出た言葉に会話の波を思わずとめた。 「だから、よかったじゃん?むこうが動揺したってことは少しは脈があるってことだろ?」 「だから動揺なんてしてないって、だってあの人・・・」 婚約者がいるもの。 そうして私のつらい恋愛はふりだしにもどる。 そもそもゴールなんて元からないのだ。あるとすればそれはスタートの後ろにある。 ふりだしに戻るたび、スタートはもうしないと決めてなんども箱にしまった。 なのに、こいつが勝手に箱を開けてはぶちまける。 私は勝手にスタートに立たされて彼が勝手にさいころを振る。 そこに彼の駒は存在しない。 「ありもしない妄想で私をぬか喜びさせようとしたって無理よ。」 その先の落胆をこいつは望んでいるんだから。はまってたまるもんですか。 「いいねぇ・・・。」 うすい唇が精一杯弧を描いて、気持ち悪い笑みを浮かべた。ほんと、ぞっとする。 彼が腰を上げこちらに身を乗り出してきた。思わずのけぞろうとするが後ろには壁。 タバコの煙を盛大に吹きかけられ耳元に痛恨の一撃。 「違う、って否定しながら内心、心が踊りだしそうなほど期待が渦巻いてるの。 明日、会社に向かう足取りは軽やかだ。でも、そこでどうしようもない現実にメッタ刺しにされて 重い足取りで駅裏にたどり着くであろう夕方が楽しみでしょうがないよ。」 ほら出た、彼の本性が。 私の背中を押して、前に進ませる振りして落とし穴に落とすのが彼の専らの趣味。 端から私の幸せなんて望んでないし、応援もしていない。 「大丈夫だよ。明日、歩けなくなったらだっこしてあげる。」 「い、らない・・・!」 「『あの人』は優しくていい人。あの日の告白を黙って飲み込んでくれて終わりを下さなかった。 これを『チャンス』だといわずして何という?」 「そんなの、いらない!」 「じゃあ、『あの人』にだっこしてもらいなよ。今のその顔すっごいそそるしいけるんじゃない?」 「・・・悪趣味」 「悪趣味なのはお互い様、さ。あいつもね。いい趣味してるよ『生殺し』なんて。」 「嫌い。大嫌い。」 「上出来!やっぱり好きだよ。」 残りの煙をありったけ咥内に吹き込まれ盛大にむせた。 「ねぇ、幸せになって。絶対に、ね。俺がんばって応援するから。」 これが女友達からのエールならばどれほどありがたく頂戴しただろう。 だがこれは受け取れない。受け取らない絶対に。 その先の「不幸せ」こそが、彼の目的なのだから。