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one day I remember

今思うこと、ある日いつか思い出す、その日のために

勢いで小噺を書いてみることにします。 下の記事をもとに。 気が済むまで書きます。 目の前の男は出された珈琲を一口のんで「おいしい」と嬉しそうにつぶやいた。 嘘つき。 そんなタバコのヤニみたいな味がする珈琲のどこがおいしいの? 会社帰り偶然会って、知らん振りしてとおり過ぎようとした。 なのに、すれ違いざま「あれからどう?」なんてニヤニヤしながら囁かれて かーっとなって居た堪れなくなった私は彼を近場にあった喫茶店に引きずり込んだ。 適当に入ったお店の珈琲がおいしいなんて、そんな嬉しいサプライズがあるわけもなく 仕事帰りの私のささやかな楽しみ(スタバでまったりラテを飲む)を この男と、この珈琲によってすべて奪われてしまった。 つくづく、不幸せな女だと思う。 その「不幸せ」を好んだのがこの男。 気づけば私が嫌いなタバコを目の前で吸い始めていた。 最近の飲食店は大概が分煙あるいは全面禁煙とされているのに、ここにはそういった分別はなく むしろタバコと薄い珈琲を好む人のみがここにやってくるような雰囲気さえある。 そうだ、彼もその一人なのだ、きっと。だからこんな珈琲を「おいしい」と言う。 何が悲しくて彼好みの店に私は入らなければならなかったのだろう。 なんてタイミングが悪い。 いや、違うか。 私のタイミングが悪いのではなく彼のタイミングのよさに自分が巻き込まれているだけなのだ。 死神、疫病神、悪魔 私の不幸せを喰って生きてるようなこいつを、なぜ、ここで生かすのだろう。 彼にはきっともっと似合う場所があるだろうに。地獄とか地獄とかじごくとか。 蟻地獄なんてぴったりじゃない。 「で、何の用?」 「それを君が言うの?ここにつれてきたのは君だよ。」 そうでした。私はこいつに一言言ってやらねばならない。 「気安く道端で声かけて貰うのやめてもらえませんか。」 「へぇ・・・道端は嫌、なんだ。じゃあ家まで押しかけてお邪魔するならいいんだね。」 「そうじゃなくて!付きまとわれんのが嫌なんです。金輪際やめてください!」 口調をいつもより強めていいきった。 彼はぎょっとして目を見開きその後すこし切なげに目を伏せ珈琲を一口。 ふぅ、とため息をつく。 「ひどいなぁ・・・慰めてあげたのに。」 彼の言った一言に、私は完敗だった。 一度唇を掠めたその男は私の報われない恋を応援するという口実で 私のつらすぎる恋路を聞きたがった。 あの日、雨の公園で、彼が日傘を持って立っていたのは偶然なのか彼が仕組んだ必然なのか。 分からないけれど、その時判断力をなくしていた私はだらしなく口を開いては事の起こりと顛末を 話してしまい、寄せてきた唇を受け入れようとして、寸前でよけた。 その瞬間、つりあがった口角にすべてを見出して。 「それが、目的?」 そういうと、いたずらがばれたような子供の顔をして「だったら?」と返された。 私は自分の頭をかち殴りたかった。 それ以来、だ。彼が必要以上に私の周りに出没するようになったのは。